13時18分21秒 [ソフトウェア]
本来なら漢字2文字で表現される「明治」以降の元号には、それぞれの元号を1文字だけで表せる合字(合成文字)が定義されています。元々JISコードに存在した合字ですが、その後に定義されたUnicodeにも存在していて、それぞれ下記のコードが割り当てられています。
合字なので、漢字を半角で表現したような感じになっています。
UTF-8コードの場合は1文字3バイトで表現されますから、データ量としては半分ではなく4分の3ですが。(^_^;)
なぜか「平成」のコードが一番若くて、平成→昭和→大正→明治の順番で定義されているんですよね。^^;
どうしてそうなったのかはよく分かりませんが。
で、どうやら、2019年4月1日に発表された新元号「令和」の合字もUnicodeに加えられるようです。(JISコードにも加えるんだろうか?)
とはいえ、もはや平成~明治の合字が定義されている番号に隣接する区画には空きがありません。
そこで、ちょっと離れた位置にあるU+32FF(UTF-8コードの場合は、E3 8B BF)に加えようということになっていたようです。
以下は、本当にそこでいいのか!? という話。(^_^;)
Unicodeには世界中の文字や記号や絵文字が定義されているわけですが、表現のバリエーションによっては同じ文字が複数個定義されています。
カタカナもそうで、「サクラ」みたいな普通のカタカタのほかに、「㋚㋗㋶」みたいな丸囲みのカタカタも定義されています。(でも、丸囲みのひらがなは存在しないっぽいですが。なんで?)
しかし、すべてのカタカナに丸囲みバージョンがあるのかというとそうでもなく、例えば「ン」は存在しないようです。下図参照。
Unicodeの番地32D0~32FEに丸囲みのカタカナが定義されていることが分かります。
最後の「㋾」がU+32FEで、その次のU+32FFは未定義になっています。
この順序でいけば、32FF番地には丸囲みの「ン」が来そうじゃないですか?(^_^;;;
しかーし!
なんと、この32FF番地に新元号「令和」の合字(合成文字)が割り当てられます。
良いのかそれで……?(^_^;)
既にAdobeは合字のフォントも作ったようですね。^^;
■日本の新しい元号がインターネットをほんの少し混乱させた理由(@TechCrunch)
■Adobe、新元号“令和”の合字を追加した「源ノ角ゴシック」v2.001をリリース(@窓の杜)
下図は、Unicodeのもっと広い範囲を見たところです。
丸囲みのカタカナの後には、カタカナで表記された各種単位の合字(合成文字)が続き、さらに点数の合字(使っている人は居るのか?^^;)が続き、hPaとかの科学単位の合字の後に、平成から明治までの合字があります。(青枠+緑色矢印の部分)
確かに、U+32FF(赤丸+黄色矢印部分)は既存の元号の合字が定義されている近くに存在する未定義領域ではありますよね。
図では見えていませんが、これ以降の領域には単位の合字が少し続いた後に隙間なく「CJK統合漢字拡張A」領域が続くので、「令和」の合字を加える余地は(しばらくは)なさそうです。
というわけで、「令和」の合字がU+32FFに割り当てられたという話なんですが。
……いや、それで良いのか!?(^_^;)
この定義の流れから行けば、U+32FFには「ン」の丸囲みを入れないといけないんじゃあ……?(^_^;;;
(まあ、既に決まっていることなので、今更ですけども。)
丸囲みの「ン」は絶対に定義しないという何らかの理由でもあったんでしょうかね?
定義されているカタカナは47個で、「ン」の他に濁音や半濁音もありません。代わりに「㋼」や「㋽」はあります。
とするとこれは、いろは歌の47音だけを丸囲みにした、という解釈なんでしょうかね?
そうだとすると、㋐㋑㋒……の順ではなく、㋑㋺㋩……の順で定義されていたら(定義の意味は)分かりやすかったんですけども。(^_^;)
そもそも、丸囲みの用途が「順序付きの箇条書きの先頭記号」みたいな感じですもんね。
①②③……とか、ⓐⓑⓒ……とかも、想定されている意図はそんなのでしょうし。
※ただ、丸囲みの文字には他に「㊤㊥㊦」とかもありますが。^^; たぶん、他の国の言語でも何かあるんじゃないかと思います。(調べていませんが。)
あと、こんな1個しか開いていない空間に「令和」を定義してしまったら、令和の次の元号の定義場所にまた困りそうな気が……。(^_^;;;
とはいえ、おそらく元号は今後も増えるでしょうから、無限の領域を確保しておくことはできませんから、飛び飛びになることは仕方がない、とするほかないんですけども。^^;
そもそも、ここに「令和」の合字を定義したとして、果たして利用する人々は居るんでしょうか。^^;
いや、まあ、居るには居るんでしょうけども。本当に合字でないといけない必要性があるのかな、とか。
今のワープロソフトなら、漢字2文字の横幅を狭めて1文字分の空間に押し込むことも簡単ですし、もはや合字の必要性ってなくなっているんじゃないかなとも思うんですけども。
……もしかしたら「平成」の合字を使って1文字分の領域しか確保されていないような記録空間に、新たに元号「令和」を書きたい場合には、合字を使うのかな……。
でも、合字を使うことを前提にしているような古いシステムが、文字コードにUnicodeを利用しているのかどうか疑問ですけども。(^_^;)
Unicodeだけじゃなくて、JISコードでもどこかに追加されるんだろうか?
謎は尽きません。
既にUnicodeには多数の合字が定義されているわけですが、これは従来の文字コードからの互換性を維持するために仕方なく定義した、というわけではなく、Unicodeになってからも積極的に追加定義していく方針なんですかね?(^_^;;;
キリがないので増やすのは止めた方が良いんじゃないかとも思うんですけども。今更この流れは止められない、ということなのかな。
そもそも合字ってJISコードと互換性を維持するための日本語向けのがほとんどというわけじゃないんですかね?
「㋋」とか「㏾」とか「㍰」のような、月・日・点などは中国語圏でも通用するでしょうから、必ずしも日本語環境だけでしか役に立たないわけではないでしょうけども。(^_^;)
(もちろん、平方キロメートル「㎢」とか、デシベル「㏈」みたいな単位記号のように、世界で通用する合字も多数あるんですが。)
まあそんなわけで、新元号「令和」の合字はU+32FFに割り当てられているという話でした。^^;
もし今お使いの環境でU+32FFに割り当てられた「令和」の合字が表示可能なら、ここ→「㋿」に見えるでしょう。^^;
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ああ! そうなんですね。なんで24点までしかないのかと思ったら。(笑)
なるほど、「時」の意味だったとは!
投稿者 にしし : 2019年04月27日 13:57
丸囲みのンはU+321Fだと思います。
投稿者 マリルリ : 2019年04月30日 20:23
U+321Fって、㈠の直前ですよね? ここは未定義ではなくて何か定義されている環境もあるのかな……?
投稿者 にしし : 2019年05月10日 00:09
unicodeの策定時に某社米国本社のエンジニアは当時漢字Talk7.1で導入したApple標準システム外字を参考にしました。その外字コード割当てを決めたのが1992年つまり平成なので一番最初にいるのです。昭和〜明治もいわゆるNEC外字との互換用に入れました。結局Apple標準システム外字は2000年頃には廃れてしまったので、将来新元号が発生するにもかかわらずその枠を予約して取っておかなかったのは問題にはなりませんでした。しかしUnicode策定には米国のエンジニア主導で勝手に行っており、将来の年号のことを考慮せずにApple標準システム外字を適用したので、将来のものを含めて年号が順序良く並ばなかったのは残念です。日本人メンバーも入っていればその辺りは考慮されていたのかもしれません(入っていたかどうかわかりません)。
投稿者 某社の中の当時フォント担当者 : 2022年01月26日 12:47
画像がゲームの没データみたいで夢がありますね😆
投稿者 Anonymous : 2023年03月02日 17:32
コメント数: 6件
> 月・日・点などは中国語圏でも通用するでしょう
これ想像と逆で、「点」に関しては中国語圏でしか通用しないやつです。日本語で言うところの「時」の意味なので24までしかないのです。
CJK互換文字は後方互換性のために用意されてるのでdeprecatedだとあれほど仕様書に書いてたはずなんですけどね…… 声の大きい日本人に押し切られた姿は容易に想像できます
投稿者 Anonymous : 2019年04月27日 12:06