17時25分28秒 [税金・経済]
地震保険に入っていない理由
地震保険には入っていなくて、火災保険の契約を見直した際に再検討したのだけども、やはり地震保険は契約しないことにした
元々日本は地震の多い国ですけども、最近も妙に多いですよね。大きめの地震が。
で、うちの家は一戸建てなのですけども地震保険は契約していません。火災保険の契約を見直した際(※)に、ちょいと本格的に地震保険のことを調べ直してみて再検討したのですけども、その上でもやはり「地震保険は契約しない」という結論に至りました。
この考え方が本当に正しいかどうか明確な自信はないので、「この考え方が正しいかどうか?」を後から見直すためにも、地震保険に入らないことにした理由をちょいと備忘録的に書いておきたいと思います。
※地震保険は単独では契約できない制度で、火災保険にオプションとして加える形でしか契約できません。(どこの保険会社でも)
簡単に言えば、地震保険の保険料が補償額と見合うかな、と考えてみたときに、あまりそうとも言えないな……、という結論に至ったので契約はしないことにしたんですが。
以下はその話(=地震保険を契約するかどうかを検討するために調べた内容の話)です。
※実際に地震保険を検討するために検索してきてこのブログ記事を読んでいる場合は、(私は専門家ではありませんし、この考え方が正しいのかどうか分からないので)以下の話はあくまでも参考程度に留めて下さい。
「時価」と「再調達価格(新価)」の違い
まず、何らかの物体に掛ける保険の補償額には、「時価」と「再調達価格」という2種類の額がありますから、この違いを知っておく必要があります。なお、「再調達価格」は「新価」と表記される場合もあるようです。この2点の違いは下記の通りです。
- 「再調達価格(新価)」: 同じ物をもう一度買い直すときに必要になる額のこと。住宅の場合なら、同じ規模の住宅を再度新しく建てるときに必要になる額のことです。
- 「時価」 : その時点での価値から判断された値段のこと。住宅の場合なら、基本的には築年数が経てば経つほど額は減少していきます。
で、ここで重要なポイントは、
- 火災保険の補償額は、再調達価格(新価)がベースでも
- 地震保険の補償額は、時価がベース
という点です。
要するに、地震保険での補償というのは、たとえMAXの支払いを受けられたとしても、「同じ規模の住宅を建て直すのに必要な額」にはならないんですね。
火災保険とは違って、地震保険はそもそも再建資金にはならない保険
火災保険は主に、被害のあった住宅を元通りに再建(または修復)するため(の資金を得るため)の保険です。
まあ、そりゃそうですよね。元通りにできなかったら困るわけですし。もしものときに「修復や再建に必要になる額」を補償してもらうために掛け金を払って契約しているのですから。
なので、再調達価格(新価)をベースにした補償になっています。(常にMAXの支払いが受けられるわけではなくて、被害状況に応じた割合での支払いになりますが。)
※「火災保険」という名称で呼ばれるものの、たいていは火災以外にも水災とか風災とか土砂崩れとか、(地震以外の)様々な被害に対応する総合的な住宅保険です。(地震による火災が原因の場合は、火災保険では補償されません。)
※建物そのものだけでなくて、家財も補償の対象にできるので、保険契約で家財も補償対象にしていれば「家財を買い直すための資金」も補償されます。
では、地震保険もそうかというと、そうではないんですね。
地震保険は、時価をベースにした補償にしかならないので、築年数が結構経っている場合、元の建物を再建築するのに必要な額には全然足りません。
なので、地震保険とは主に、被害を受けてしまった後の「当面の生活資金」を得るための保険という位置づけに過ぎないようです。
▼地震保険は民間企業だけでは運営しきれず、政府との共同運営になっている
なぜそんな違いがあるかというと、
- 火災は基本的に1件単位で発生するのに対して、
- 地震は同一地域の広い範囲でまとめて発生しますから、
地震の発生時には一気に莫大な支払いが発生する可能性があるために、「民間保険会社が単独で地震保険を運営するのは無理だから」なようです。(詳しくは知りませんが、地震の発生確率から保険料を算出するのが困難なのか、算出しても非現実的な保険料になってしまうとか、なんかそんな理由でしょうかね?)
なので、地震保険はあくまでも(再建ではなく)当面の生活資金を補償する位置づけとして、保険の補償額を「建物の時価」に抑えた上で、しかも民間保険会社と政府が共同で運営する形態になっています。
財務省のウェブサイトに「地震保険制度の概要」というページがあるのですが、そこには以下のように書かれています。
- 地震保険は、地震等による被災者の生活の安定に寄与することを目的として、民間保険会社が負う地震保険責任の一定額以上の巨額な地震損害を政府が再保険することにより成り立っています。
- 地震等による被災者の生活の安定に寄与することを目的として、民間保険会社が負う地震保険責任を政府が再保険し、再保険料の受入れ、管理・運用のほか、民間のみでは対応できない巨大地震発生の際には、再保険金の支払いを行うために地震再保険特別会計において区分経理しています。
ちなみに、2011年にロイター通信が「東日本大震災による損保各社の業績影響」という記事を公開しているのですが、それによると、民間保険会社と政府の地震補償割合は、地震保険法という法律で以下のように決まっているようです。
- 1150億円まで保険会社が100%負担
- 1兆9250億円まで保険会社と政府で折半
- それ以上の部分は政府が95%負担し、残る5%を保険会社が負担
上記のように、大規模災害の場合には政府がほとんどを負担するような仕組みがないと、とても運営できないのが地震保険だということなんでしょうかね? たぶん。
地震保険で掛けられる保険金額は、火災保険の保険金額の30%~50%限定
地震保険の補償は時価がMAXだと述べましたが、それとは別にもう1つ別の上限があります。
それは、地震保険として掛ける保険金額が、「火災保険の保険金額の30%~50%の範囲内に限る」という制度になっている点です。(なぜその制限があるのかはよく分かりませんでしたが。)
火災保険の保険金額は、当然、「今の建物と同じ規模の建物を再建する際に必要になる額」として決めますよね。(=再調達価格)
地震保険で掛けられる保険金額は、その「火災保険の保険金額」の50%が最大額です。
なので、
- 「時価」と
- 「火災保険の保険金額の50%」の
どちらか低い方が、補償額の上限になるということでしょう。
そもそも、地震保険での補償額は常に100%というわけでは全然ない
地震保険での補償額が時価ベースだからといって、常に「時価の100%」が支払われるわけではありません。
地震保険では、損害割合に応じて下記の4段階で支払うよう決まっています。(どこの保険会社でも同じです。)
- 全損 :地震保険の保険金額の100%(時価額が限度)
- 大半損:地震保険の保険金額の60%(時価額の60%が限度)
- 小半損:地震保険の保険金額の30%(時価額の30%が限度)
- 一部損:地震保険の保険金額の5%(時価額の5%が限度)
で、例えば東日本大震災による保険料支払いでは、「だいたい全体の7割くらいは『一部損』だと判定されて、5%の補償しか受けられなかった」という情報もありました。
まあたしかに、本当に何もかも完璧に潰れるケースって(もちろんあるにはありますが)滅多には見かけないですしね。
なので、地震保険を考える際には、以下の2点も考慮する必要がありそうです。
- 補償額は、時価がMAX。(ただし、火災保険の50%が上限)
- 実際に支払いを受けた地震被災者の7割くらいは、「一部損」として5%だけの補償。
※保険会社によっては、地震保険の保障額を2倍にする特約を設けていたりしますが(その分だけ保険料は増えますけども)、掛けられる最大保険額が「火災保険の50%」だからといって、特約で「補償額を2倍」にしたところで、実際に支払われるのは「時価」が上限なのですから、よほど建築して間もない場合を除けば「再建できるだけの資金にはならない」という点では同じように思います。
時価はいくらなのか? →固定資産税の評価額が参考になる(?)
一戸建て住宅では(※マンションについては詳しく調べていないので一戸建ての話だけをします)、所有者が固定資産税を毎年支払う義務があるので払っているはずです。(土地と住宅のそれぞれに固定資産税が課せられます。)
その明細が毎年5月頃に届きますが、そこに「固定資産評価額」という項目があって、市区町村が認識している評価額(時価)が掲載されています。
地震保険での「時価」が、この固定資産税の計算根拠になっている評価額と同じなのかどうかまではよく分かりませんでしたけども、1つの参考にはなるでしょう。
築ウン十年と経っていると、たとえ最初に数千万円で建てたとしても、建物の評価額はずーいぶん下がっていて、数百万円くらいになっているっぽいです。
suumoの固定資産税解説記事にあるグラフによると、木造住宅の評価額は築10年で約半分になり、築20年では5分の1くらいになり、築25~6年を過ぎれば10分の1を下回るのだとか。
新築から四半世紀を過ぎるだけで評価額がわずか1割をも下回るというのもすごい話ですね……。そんなに下がるものなのかと。(まあ、その分だけ固定資産税が安くなるのなら良い面もあるわけですが。)
なので、築うん十年と経っている場合は、「この家は当時3千万円で建てたのだからまだ1千万円くらいの価値はあるはずだ!」みたいな考えはしない方が良いと思います。^^; その場合はむしろ土地の価値の方が高いくらいにまで下がっている可能性もあります。
▼地震被害4段階でのだいたいの補償額が計算できる
で、地震保険では、保険金額のほかにこの「時価がMAX」という限定条件があるわけですから、先の4段階「全損・大半損・小半損・一部損」で具体的にいくらの補償額になるのか、だいたいの計算ができます。
仮に築40年とかで建物の時価が200万円だとすると、大半損なら60%なので120万円、小半損なら30%なので60万円、一部損なら5%なので10万円ですね。
地震保険料の何年分でその額を超えてしまうかも計算してみると良いと思います。(時価は年々減っていくので、今の時点で「何年分」と計算しても、実際にはそれよりも短い年数で超えてしまうと思いますが。)
このように考えると、(築年数が相当経っていてローン等が残っていない場合には特に)地震保険を契約するメリットが見えてこないな……というのが実感でした。
地震保険に入っておくべきかどうかは、築年数によっても変わりそう
もちろん、家を建てたばかりなら、地震保険も契約しておく方が良いでしょう。
時価が高いうちは、それだけ補償額も高いわけですし。
ただし、先程もちょっと述べたように、「時価の100%」に設定できるわけではなくて、「火災保険での保険金額の50%」がMAXですけども。なので、時価の高い頃(=建築して間もない頃)に地震で倒壊した場合でも、立て直すだけの資金は得られません。
しかし、建てたばかりの頃なら住宅ローンだってずいぶん残っているでしょうから、たとえ半額であっても受け取れるように契約しておかないと、借金の負担が余計に大変なことになるでしょうからね……。
※そもそも、ローンを組んで建てた場合、火災保険なり地震保険なりの保険を家主の意思で自由に契約できるのかどうかよく分かりませんけども。(詳しくは知らないんですが、ローンを組んで建てた場合は、ローン提供元側の指示で指定の保険に入らないといけないとか、そういうこともありそうな……?)
しかし、築うん十年……という場合は、先程述べたように建物の評価額(時価)はかなーり低くなっているでしょうから、補償額もかなーり低くなります。
なので、築うん十年という建築物の場合、安くはない保険料を払って契約するかどうかは微妙なところなんですよね……。
ちなみに、日本での地震保険の加入率は33%くらいで、火災保険の加入率は82%くらいだそうです。(※ソースがどこだったか失念してしまいましたが。)
地震保険の加入率が33%程度しかない理由は、この辺(=建物の時価が低ければ補償額も低い点)にあるのだろうな、と想像しています。
あと、貯蓄が苦手な性格の場合には、入っておくメリットはあるかもしれません。
地震被害に遭ってその家に住めなくなってしまった場合には当面の生活資金が必要になりますが、貯蓄がなかったら保険に頼る以外にありませんから。
当面の生活資金を貯蓄できているなら、地震保険は不要と考えて良い?
地震保険とは「建て直すための資金」ではなくて「当面の生活資金」を得るための保険、という位置付けなので、結局のところ、
- 当面の生活資金は貯蓄から出せる
- 築年数が長いために時価が低い
……という2条件に当てはまっている場合には、地震保険に入る意味は薄そうだな……という結論に至りました。
当面の生活資金くらいの貯蓄ができるのなら、地震保険の掛け金に費やすよりも、「いざというときの生活防衛資金」として自分で貯金(運用)しておく、という方が良いのではないか、と思います。
というわけで、地震保険は契約しない選択をしています。今のところ。
この考え方が正しいのかどうか、そこまで絶対的な自信はないのですけども。
とりあえず、今後に再検討することもあるかもしれませんので、そのときにまた同じことを調べ直さなくて済むように、備忘録的に考えを書いておきました。
日本は地震が多いですし、いつどこに(建物倒壊レベルの)大地震が来るかは分からないので心配はあるのですけども、その心配を補えるような「建築し直せるだけの補償を得る手段(保険)」というのは用意されていない世の中なのですねえ……。